揺らぐ幻影
暖房が頑張る校舎は生温いから、馬鹿が調子に乗るのかもしれない。
「大塚くん、さっきは結衣ぴょん外してごめんね!」
一時間目の授業の後、ごめんと伝えたけれど、もう一度押し売りしておいた。
それぞれが好きに机を移動させ、パンやカップラーメン、お弁当を食べるランチタイムとなる頃、
お弁当を包みから出す流れとして、「てか結衣、朝のキレ芸?」と、
ショートカットの生徒がさらりと告げると、
同じくコンビニ弁当の蓋を開ける作業の一部かのように、
「滑ってたよ?」と、セミロングの生徒が続けた。
正に二人のチームワークの密さが垣間見ることができる瞬間で、
決してロングヘアの生徒を責めずとして、がっつり痛いところをえぐってくる。
怖いくらいの笑顔だった。
下唇を軽く舐めた舌を動かし、「あはは、反省してます、ごめんなさい。編集で。カットで、あはは」と、
結衣は笑いの真ん中に挟んだ謝罪を成し遂げた。
ここできちんとふざけることなく謝ろうが、もう過ぎた事には自己満足しかない。
とある少年は既に傷付いているのだから無意味だ。
これが結衣なりの誠意でこれが愛美と里緒菜なりのお説教で、
回りくどいやり方が好き。
なんでもかんでも簡素化して、なんでもかんでもストレートではツマラナイ。
含みや裏を見抜ける人になりたい。
廊下を通ったのは、好きな人と嫌いな人だ。
二つの人影を曇りガラスの窓からでも透視できる結衣は何者なのだろうか。
近藤が笑う声がすると、耳鳴りみたいに頭が痛くなる。
私だけを見て、とか
我が儘になりたいのに嫌われたくないから何も言えない。
黙って静香の影を呪うしかできない。
愛されお姫様になりたいのに、このままでは嫌われ魔女になってしまいそうだ。
魔法のペンがないから心はマイナス嗜好のままだ。
早く元気になりたい。
早くちゃんと元に戻りたい。
勘違いなプラス思考のお気楽ガールを演じたい。
お花畑の国は一本一本確実にお花が減るから、動物さんは逃げていくし妖精さんは消えていく。
早く彼女になりたい。
夢を夢にするのは誰?
…‥