揺らぐ幻影
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アルバイトの時間まで少々余裕があるため、

女子大生は明日からのテストに備え勉強道具を広げていた女子高生を椅子に座らせ詰問していた。


負のオーラを出すまいといつもに増してクオリティーの低い冗談を連発していたことがキッカケだったと思われる。


「ミー、洋ちゃんは?」

言うつもりはなかった。
だって可哀相アピールをするみたいだからだ。

けれども先輩という年の功か、根本が甘えた性格なせいか、

結衣は「……無理です」と、白状してしまっていた。

弱々しい音は休憩室のテーブルに転がってから、しばらくすると消えていった。


「まあリタイアもアリじゃない?」と言う先輩に、なんだか気が楽になり、結衣自らここ最近の現状を話した。

好きな人・近藤は静香という同じくクラスの女子生徒とばかりつるんでいて、

二人は仲が良さそうにすればするほどに、結衣と彼の関係がどんどん希薄になっていると、

あの人は違う女の子とばかり居ると。


シリアスに浸るのは嫌だから、相変わらず変な顔を作っておどけたのに、

つまらないと却下されたので真顔のまんま黙って唇を噛んだ。

「皆が皆好きな人と付き合える訳ないしー金持ち男と超絶美女ならなんとかなるかもだけどね?」と、

砕けた前フリをした後、「ちょっと忠告」と年上の女性が静かな口調で空気を操るものだから、

「はい」と真面目に年下の乙女は頷いてしまっていた。


今月のシフト表、スタッフの電話番号、社内目標が貼られた壁、向かい合う二人。


「洋ちゃんが静香ちゃんと付き合ったとして? ミーは好きなんだよね?」

「好き、です」

ホワイトデーの返事を前に愛しの少年が気に食わない少女と交際しようが、好きなモンは好きだ。

大塚みたいに無垢な彼女は、きっと簡単には好きを辞退できないし、

あの甘く低い声が恋人に好きだと囁くなんて耐えられない。

だって好きだから。
まだ二人はカップルではないというのに、仮説でも嫉妬してしまう。


切ない切ないいじらしい恋心を揺らすのは辛辣な言葉――?

「ミーさ、それじゃビッチだよ。彼氏彼女になっちゃった人に片思いしちゃってたらさ? それ純粋と言う名の悪魔だよ?」

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