揺らぐ幻影
「……。」
いいや、真の言葉であった。
恐らく天然姫には女子大生のお喋りはキツイ発言であり、女子高生の心情は不可解であろうが、
結衣は制服を着ているから、やはり人並みに熟知してしまっている。
よって、先輩の意見に同調した。
そう、付き合っている人への片思いはとってもとっても自己満足になるかもしれない。
いくら結衣が健気に近藤を好きであろうが、彼が静香の彼氏となってしまっては純粋な感情は罪になる場合がないとはいえない。
静香という立場で考えてみて?
自分が彼女であるのに、切ないんですとばかりに ある女が一途に自分の彼氏に想いを寄せる状況は、
もしかしなくても、彼女目線では結衣という女の無垢さが恐怖になると言ってもあながち間違いではないかもしれないのだ。
つまり、大変辛いのだけれど、素直な心は誰かを傷付ける可能性があるかもしれないということだ。
、……
なんか。
私、どうしたいんだろ
今も明日も分からないけれど、とりあえずこのままではいけないことがよく分かった。
うじうじしている間に万が一近藤が静香と交際を始めれば、
結衣はどうしようもない未来しかないことを悟ってしまった。
「もう洋ちゃんに嫌われてんだから振られるまで頑張れば? このままじゃビッチ予備軍だよ、あはは」
あっけらかんと暴言を吐き、根拠のない持論に納得して一人笑う女子大生は、
趣味が女子高生の結衣の操作が上手いこと。
だって教室が大好きな彼女は、好感度が高くてナンボなのだ。
となると、皆に愛されるために嫌われ者になれないじゃないか。
もしも近藤と静香の二人がカップルになり結衣が行き場のない恋心を温めるハメになると、
クラスメートたちから略奪愛予備軍とブーイングが起こるではないか。
だから、皆大好きE組のマスコット・結衣ぴょんを演じる義務がある結衣は、近藤と両思いになるしかないではないか。
「私がんばる!」
エプロンの紐を結び直し、気合いを入れたか弱き少女に、「タメ口かよ」と鞭を打つお姉様の優しさが好き。
頑張ろう、彼女になろう。
夜空に負けないキラキラガールになれますようにと祈ってみた。