揺らぐ幻影
ラブストーリーの乙女は、なんだかんだ根がいい子で、
ひょんな優しさを持っているから、ヒーローはヒロインの心に惹かれる。
それは綺麗な物語――いかんせん、田上結衣という女は恋するお姫様に必須な良い子の部分を持ち合わせておりません。
想い人が落ちる瞬間の切り札である主人公レベルが著しく不足している。
つまり、まだ進化途中の彼女は哀れな魔女ビジョンで物事を判断しがちだ。
例えばライバル、
派手なファッションの場合は遊んでそう、軽そう、そんな風に蔑む。
そして、近藤をたぶらかすなんて嫌な女だと思い込む。
お上品な服装ならブリッコ、男受け狙いすぎ、そんな風に罵倒する。
そして近藤を騙すなんて最低な女だと思い込む。
露出した格好ならユルそう、浮気しそう、そんな風に憐れむ。
そして飽きたら近藤を捨てちゃうんでしょと思い込む。
ふんわりした服なら天然狙いすぎ、気さくオーラ一番したたか、そんな風に嘲笑う。
近藤を操るなんて質の悪い女だと思い込む。
オシャレに興味がない地味な衣服なら、着飾らないのかなと上から目線になる。
近藤は振り向かないんだからと思い込む。
ほら、女の子ってこういう部分が隠れており、情けなくともそれがリアル、
清純派が居るならば、相当誇り高く生きているのだろう。
通常の女の子は、好きな人の隣に居る子を侮辱することで、悲しいけれど必死に自尊心を保つものだ。
仮に彼女が居たとして、
『あんな女選ぶなんて見る目ない』、『なんであんな女なの?』、『騙されてるのに』などと否定することが、
自分の負けを認めていることだと知らなきゃならない。
ライバル女の気に食わないところ、容姿だとか性格だとかは、
自分が努力して改善しなければならない点だ。
しかし、オリジナリティが叫ばれる昨今、
足りない部分を満たすのも大切だけれど、らしさを伸ばすのも必要なのかもしれない。
結衣のらしさは何?
それは非主人公要素だ。
無神経有害具合なら誰にも負けない。
ほら、逆さに考えればいい。
周りが見えないということは、つまり一生懸命頑張れる人だ。
なかなか綺麗な心があるじゃないか。