揺らぐ幻影
けれども、人間そう簡単にプラス思考にはなれない。
従って、相変わらず執拗ヤキモチガール結衣は、
ホワイトデーまで日にちがないなら近藤に接近するべきなのだけれど、
静香と仲良くしている様子を傍で体感したくなくて、避けるようにしていたため、
あっという間に月曜日になってしまった。
見ないようにしていたけれど、意志が弱いからか、あるいは本能か、
いつだって煉瓦色の髪を探して、結局は彼の姿を眺めてしまっていた。
必然的に視界を独占するのは近藤で、見る限りで彼はずっと静香と居た。
これだけでも十分凹んだというのに、神様はまだまだ結衣をネガティブにさせたいらしい。
この一週間、
ホワイトデーは間近なのに、意中の人からメールなんてこなかった。
ぽかぽかした日だまりを浴びて温かな柔らかさに包まれる校舎、
ココナッツパウダーの集合体のような雲は穏やかに流れていく。
マドカ高校は敷地を拡大し、この春をめどに離れに新校舎を設立中で完成間近、
いいや、校舎と呼ばないかもしれない。
そこは服飾コースの生徒が造った服を一般に販売するんだとかで、
模擬店のように内装やら店番やら原価やらが、全てが生徒の判断で、
二、三年が一ヶ月毎の交代、五人制なので約二回は店に立つことになるらしい。
来年度、二年生になれば近藤はお店に携わるのだろう。
静香と夢に向かって頑張りたいのだろうか。
彼の目標なんて知らないけれど、
服飾コースを選んだのだから、ファッション関係に進むのだと朧げに予測している。
あの女の子は近藤の希望や進路を知っているのだろうか。
だとしたら、また一つ自分が嫌いになるし、自信がなくなる。
気持ち悪いな私
こんな女々しかったんだな私
愚かさにため息をついた。
天気が良いと逆に己の汚れた感情を隅まで照らされて、
また一つ自分を嫌いになる。
暇つぶしに渡り廊下から青いシートで覆われた校舎を見つめた。
バレンタインにチョコをあげた。
バレンタインに好きだと言った。
バレンタインの効果はどこに現れたのだろうか。
――――ハテナだ。