揺らぐ幻影

少し前は恋に溌剌として、笑顔で善意に溢れた気持ちになれていたというのに、

好きな想いで清潔に染まったはずが、ひどく嫌に汚れてしまった。

恋の育て方を間違えてたのだろうか。

それでも部屋に飾っているバレンタインを反芻させるお花を綺麗に咲かすことができているのだけれど。


「だって前とか女子とあんま居なかった癖に。なんか最近ベッタリじゃん」

瞳を閉じたらいつだって近藤が待っていてくれたのに、今や静香がセットで現れるため、

このように結衣を必要以上に無気力にさせていた。


「それあれコンペ! デザインの為でしょ?」

「技術的にフィーチャリングして利用してるだけだって」

里緒菜も愛美も気にしすぎだとばかりに笑い飛ばす。

いつもはつられて笑えていたのに、結衣の口角が上がることはなさそうだ。


  ……やだ

  嫌、

少しだけ顔を覗かせて見ても、童画は変わらない。


距離があり、二人が何を話しているかは不明なのだけれど、

近藤と静香はいつも雑誌を手に頭を近付けぴったりとくっつきお喋りしている割に、

恋愛的な雰囲気というよりは、ビジネス的な臭いを感じる愛美は、

もう一度、「だって静香ちゃんは選ばれし服コの三人なんだし」と、

デザインのために絡んでいるだけだと結衣を励ます。


同じく里緒菜も「服コなんだから普通のことだよ」と、

二人がつるむことに他意はないと慰める。


そして、何より学年末に服飾コースは課題があるのだと声を大にする。


そんなこと、結衣だって分かっている。

近藤と静香の二人は、単純に作業をしているだけで、

結衣が勝手に思い込み激しく嫉妬して深読みをしているだけだと心得ている。

クレイジーながらにも、そこまで彼女は馬鹿ではない。


  でも、

  ……分かってない

ぎゅっと手摺りを握る。
外気に触れ冷えたポールのはずが、込み上げる情に熱を持つ。


里緒菜も愛美も結衣を過大視している。

そう、親友が手の平に集まる憎悪の熱さで、なんでも燃やしてしまえそうな事実を想像していない。

ジェラシーは世界が狭い女の得意技なのだとしたら、結衣は立派に人格崩壊ライバル女を演じられる実力がある。

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