揺らぐ幻影

仮にデザインのために女子とつるむとしても、

好きな男子に相談されるなら、自分が一番に役に立ちたいものだ。

近藤が最初に頼る存在が結衣でありたい。


皆は分かっていない。
ファッションのことだから関係ないと境界線を引かれるのが嫌だった。

同じ側に居る静香になりたい。


だけども、デザイナーとパタンナーの意味さえ明白に説明できず、

基本的な知識もない結衣が、静香の代役に抜擢されるはずがない。


  静香ちゃんになりたい

奥の顔になりたい、愛美のセンスが欲しい、里緒菜の大人力を備えたい、

自分は自分でしかない癖に、どうして誰か別の人になりたがるのか。


オレンジ色が似合う生徒は夏の太陽のように殷賑だ。
結衣のパーソナルカラーは謎だ。


ベランダから聞こえる楽しそうな笑い声に頭の中で線が繋がった。

なかなか冴えているのかもしれない。FXで儲けられるかもしれない。




「……諦めてほしいんだ、ぽこりん」


そう、近藤洋平、

今まで女子とべったりしている場面を見た記憶がないのに、

ホワイトデー目前で露骨に癒着している。

それは好意を寄せてくる子を振るのが面倒なので、

間接的に諦めさせようとしているのではないだろうか。


結衣より容姿も性格も才能もある静香を使えば、自ずと身を引くだろうと企んでいるに違いない。


メールもくれないし話しかけてもくれない、挨拶だってしてくれないし静香とばかり居る。

普通、好きな人がいるなら、その人の視界に入るよう行動するはずで、

結衣の瞳に近藤が映るのは、彼女が意図的に彼を見ているだけだ。


バレンタイン、呼び出し、告白。

こちらからアクションをとらない限り、相手が動いてくれることはない。


  、ばかみたい

冷たい風を冷たいと感じなくなり、心が麻痺してしまう。


「可愛いし大丈夫」
「大丈夫、彼女になれるよ」

女子高生を真似てわざとらしく褒める二人に、心配ばかりかけられない。

努力もせずに嫉妬に励むなんて、今度ばかりは情けないと愛想を尽かされるかもしれない。


結衣は笑った。
泣き声を風がさらってくれたらいい。嫉妬の炎を消してくれたらいい。

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