揺らぐ幻影
どうして恋をした方が頑張らなきゃいけないのか、どうしてこちらばかり走らなくちゃならないのか。
だって聞いて?
後ろを駆け足で追いかける結衣が居ることを知っている癖に、
近藤は手をひいてくれやしないし、立ち止まり待ってくれやしない状況はあまりに切なくて虚しくなる。
暴れたらくなる、泣きたくなる、それでも壊れたくはない。
人として意地がある。
とりあえず動くことは不可能でも両足で踏ん張っていたい。
それは強がり?
弱虫な結衣は今うずくまりたくはない。
なぜなら、今弱音を吐けば、今嘆けば、それが大嫌いな構ってちゃんになると知っているからだ。
自分ダイスキ自己顕示欲に見舞われた女になりたくはない。
プライドが許さない。
だってこの貴重な気持ちを、この綺麗な恋愛を悲劇のヒロインアイテムにしたくないじゃないか。
失望するのは、気落ちしている自分を皆にアピールしたい目的なだけだ。
だって、そうでしょう?
マイナス思考は要するに『誰か励まして〜可哀相なアタシを』と叫ぶこと、違う?
結衣は恋愛をしている自分を好くよりも、
結衣が恋愛をしているから近藤が笑顔になって、その彼に笑える自分を好きでいたいのだ。
ほら、前者も後者も、他者からすれば同じ自己愛女なのだが、
一緒にされたくはないと主張するプライドが高い女の子は往生際が悪い。
自尊心が強いことの評判があまりよろしくないとされているから言うのだ、――『プライドなんてない』と。
この意識が既に自負心がずば抜けているというのに。
よって、見栄っ張りと自覚している結衣は逆にプライドが全くないのかもしれない。
泣きたいヘタレが初恋として誇りを守りたいなら涙は封印しよう。
さあ、今こそ愛美や里緒菜を頼るべき状況なのだろうか。
二人は冗談を挟んでさりげなく勇気づけてくれるため、明日から復活できるはずだ。
でも、そんな相談会は所詮『アタシを励ます会』で、
親友に自分の価値を認めさせる発言を要求する押し付け会合で、無意味で無駄だ。
だって頑張るのは誰?
何をしなければならないのか分かっているのに、まだ二人に哀れんでくれとアプローチをする?
そんな女子っぽさは遠慮したい。