揺らぐ幻影
また、魔性ガールなら今こそ市井か大塚あたりに涙を見せる場面だ。
結衣は知っている。恋愛は男子に頼る方が楽ちんだ。
『頑張ったね、俺の前なら泣いていいよ』、『辛いね、話なら聞くよ』なんてちやほやしてくれる。
この恋心が大切だと主張しながら、欲望に忠実になれば簡単、
市井の温かな胸に飛び込み抱きしめてもらい泣けばいいし、
大塚の前で瞳に涙を浮かべ、切なさを耐えてますと披露したらいい。
こういう状況で男子を頼る女はしたたかだ。
男子に好かれる子と女子に嫌われる子ってこれ。
気がない人にも好きですとばかりに甘えて擦り寄ることが隠れ技だ。
結衣は無垢なんかじゃないから、今、このもどかしさは異性を頼る方がお姫様扱いしてもらえて楽になれるし、
また、ほっとけないと好かれ、得すると分かっている。
知ってしまっている。
この恋愛を利用すれば、彼らの中で己の好感度が上がることを。
でも結衣は皆に惚れられなくていいのだ。
近藤だけに惚れてもらえたら満足だ。
どうでもいい男子に護ってほしくない。
結局、携帯電話で繋ぐのは愛美と里緒菜?
いいや、女子は親身になるからお説教をする訳で、それを聞きたくない。
素直に聞けず成長しない悪循環を抜け出せない。
結衣はただの馬鹿で、男子と女子を選べず、立ち止まる。
今まではあっちやこっち、手当たり次第頼ってきた。
信頼することが友情だと思っていたから以前、愛美や里緒菜にあてにされなかったことが辛かった。
でも、今なら分かる。
気のおける友人だからこそ、頼ったらだめな時があるのかもしれない――言い換えるなら、
親友だからこそ、気配りをしなければならない時があるのかもしれない。
逐一相談するのではなく、『成長したよ!』と事後報告をして、
友人を喜ばせるサプライズをする方が良い時があるのかもしれない。
だから諦めずに結衣自身で頑張るべきだ。
そうしたら皆が喜んでくれるし褒めてくれる。
だが、すぐに立ち直れません。すぐにマイナスからプラスになれません。
それが片思い。
今夜の宝石たちの光沢は偽物だ。一週間前から決まっている。
…‥