揺らぐ幻影

片思いを頑張るのは楽しいと、短絡に思った。


「愛美ー里緒菜だいすき、あれよ、もうあれ、ほんまピカデリーには負けるけどピカん次に好き、はは」

恋をしている浮遊感が心地良いご機嫌な少女は、両サイドに居る友人に告白をした。


そうすると、『ありがとう』のみの友情チックな台詞は、彼女たちのグループの価値観だと鳥肌モノため、

つまらない冗談を挟む癖は欠かさないらしく、

「私はシッコクの次」と愛美が、「ゼーットの次」と里緒菜が、

それぞれ三流らしい合いの手を入れる。

これがクラスメートの青春に一生懸命な女子とは異なる三人なりのこざっぱり友情薄情論だ。


こんなだから結衣はまた思う。
友人はなんて優しいのだろうと、自分もそんな風になりたいと、本当に思った。

しかし、女友達はライトでソフトな感じがモットーだし、

ガッツリ感は少し胸やけがしそうだし、語れば語るだけ安価になると踏んでいるから、

巻き髪の彼女が想いを口に出して熱弁することはないのだけれど。


恋をして育つのは何も男女の愛情だけではない。

両思いという目標を共有することで、世間でいうところの友情がびっくりするくらい育っていくのだろう。

きっと栄養分はどちらも笑顔に違いないと、素敵にまとめてみよう。



太陽が後少ししゃがめば、夕焼けが綺麗な時間になる予定だ。

小さくなる背中、市井に手を振り一人で歩いていく近藤――

  あ、

  やっぱり曲聞き出した

別れた後でイヤホンを装着する心意気に、今、結衣の中で勝手に好きな理由が増えた。

小さな配慮ができる部分にキュンとなった。


  ばいばい、とか


好きな人が歩く姿に、いつかその横を自分がと、リクエストしたくなるなら片思いの素質がある。

好きな人と二人で道を作っていきたいと願うなら、乙女心の純度が高い。


両思いの世界を教えてほしい。
未知の世界を知りたい。

といった具合に、一方的に高まる未来への期待を近藤に気味が悪いと引かれないことを祈り、

結衣は彼と過ごす人生に微笑んだ。


透明の癖に意地悪な壁は、なかなか前に進ませてくれないけれど、もう向かい風なんて気にならなかった。


…‥


< 56 / 611 >

この作品をシェア

pagetop