揺らぐ幻影
教室のドアも廊下側の曇りガラスの窓もぴっちりと閉ざされているのは、
渡り廊下から図々しく入り込む外気を遮断するためだ。
風に性格があるならば、今日の子は陽気なタイプなのかもしれない。
その訳を説明しろと言われても、なんとなくなので答えられないけれど、
皆から総スカンを喰らえど、直線道路で暴れまくっている感じが愉快過ぎる。
心臓、ドキドキ
大丈夫だと自分に言い聞かせ、結衣が公園デビューで不安な幼児ばりの無垢な瞳で愛美を見ると、
『階段のぼってるって』と、携帯電話片手に言われ、いよいよかと唾を飲む。
姿のなかった里緒菜は携帯電話を現代風にトランシーバーの代用とし、近藤がいつ来るか探偵のように見張ってくれていたのだ。
ほんと里緒菜も愛美も感謝しきれないし
あー……、
どうしよ、どしよ
耳を澄ませばちゃんと聞こえる。
市井と近藤の声を聞くだけでうっとりとしてしまうのだが、今はそんな暇を許されてはいない。
「がんばって!!」
頬を持ち上げて愛美はわざとらしくアルバイト先の受付で身につけた営業スマイルを作ってみせた。
なぜだか友人の笑顔は不思議と落ち着く効果があり、
彼女が笑っているのだから大丈夫だと、勇気のおすそ分けをされた気持ちになれるから、
単純な結衣は頑張ろうとカツが入る。
教室前の廊下で相棒と別れると、結衣は足踏みをして、こちらに来る目的の人物とのチャンスを狙う。
階段の先から例の人物、ふんわりとした特徴ある髪の毛が覗き――
今だっ!!
カタカナで表現するなら、ガチャガチャバサバサ的な安っぽい効果音、騒音雑音、
摩擦のような音と耳につく高い音はやっぱりガチャンとかドサッが妥当だろう。
結衣の片思いは三流感が大事で、廃れたシナリオこそが鍵だとされている。
だから――――
「大丈夫?」
――計画通り片思い初心者は任務を遂行した。
それは制服を脱いでしまった人には、痛すぎて到底真似できないことなので、
恐らく現役らしい強みだ。