一なる騎士
「しかし、何か様子が違うと思わないか?」

「思います。貴方こそ何かしたんじゃないんですか」

「二人ともどうかしたんですか」

 ひそひそと話し合う二人に、逆にリュイスが不審がるのは当然といえば当然だった。

「いや」

「別になんでもありません」

 ほとんど同時に答えたエイクとクレイドルを不思議そうに見比べるリュイスは、普段とどこも変わらないように見える。

「そうですか。ところで、エイク殿。頼みがあるのですが」

「なに? お兄さんは優しいから、美人さんの頼みならなんでも聞いちゃうよ」

 対するエイクはいつものふざけた返答。

 しかし、昨日とは違ってリュイスは眉一つ動かさなかった。

「私の右腕になって欲しいのです。もうすぐ王都への遠征が始まる。いっしょに来て下さいますか」

 一瞬、さすがのエイクも戸惑ったように灰色の瞳を瞬いた。


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