一なる騎士
「……」

 思わず口を挟もうとしたクレイドルも、リュイスの強い眼差しに出会って言葉を失った。口ぶりだけは、なにほどもない、まるで食卓の上の塩を取ってくれとでも言うような調子だったと言うのに。

(何を考えている、リュイス?)

「それは、決心がついたということか」

 エイクの意外なほどに慎重な言葉に、リュイスは肯定も否定もしない。ただ黒い瞳が射すくめるように彼に向けられた。

「『大地の剣』を破壊しろ、か。私にはそんなことなどとても思いつきもしなかった。思考実験といいましたね。聡明な貴方なら、あらゆる可能性を提示できそうだ」

「つまり、僕に参謀になれというわけかい」

「はい。よろしければ」

 答えるリュイスは拒否されることなど考えてもいないように平然としている。

 エイクは軽く肩をすくめた。

「言ったろう、美人さんの頼みはなんでも聞くって」

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