アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
すると彼女の表情は緩み戸惑った表情に変わる。
「お礼って…別にそんなこと期待して助けたわけじゃじゃいんだけど…。」
「と、とりあえず!俺の連絡先教えるから。」
そう言って俺はポケットから携帯を取り出す。
「俺の番号教えるからさ。いつでもいいから気が向いたら連絡してよ。それならいいだろ?」
彼女は煮え切らない様子ながらも同じく携帯を取り出した。
「連絡しないかもよ?」
そう言った彼女に俺は冗談混じりに言葉を返しながら彼女に歩み寄る。
「そしたらまたクロちゃんとかいうのに襲われてやるから。そしたら、助けに来てくれるんじゃないの?」
彼女は呆れた顔で赤外線ポートを俺の携帯に向けた。
「あんた本当にお礼する気あんの!?」
「あるよ!」
と、彼女は携帯の画面を見つめたまま固まっている。「…。」
「あぁえっと。もしかしてやり方分かんない?」
が、自分の携帯の画面には送信完了の文字が。
「アンタの名前…。」
「あぁ!たきもとしゅういちって読むんだけど。好きに変えて良いから。タッキーとかシュウとか。友達からはシュウイチって呼ばれ…。」
そこまで言って俺は彼女の変化に気づいた。
「あっと、俺…何か…。」
彼女の携帯を握りしめ小さく震えている。
「アンタのせいで嫌なヤツ思いだしたわ!」
すごく動揺しているのが、はっきり分かる。
「ちょっ!どうし…」
「アタシの前から消えなさいっ!」
「え、そんなっ!」
「いいから行けっ!」
そういってグーで思い切り俺の頬を殴りつけた。
俺はそのまま地面に倒れた。
彼女は俺を睨み付けてさっさと歩いて行ってしまった。
俺が乗っていたブランコはまだ僅かに揺れていて、どこか具合でも悪いのかキィキィと悲しげな音をたてて鳴いていた。
「何…?」


「何なのよ!?」


2人はほぼ同時に呟いた。
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