千夜を越えて




「平助、うるさいぞ。とっとと座れ…」





土方は、藤堂の横にいる咲夜に気付き、眉間に皺を寄せる。





「何でお前がいる。呼んでねぇぞ。」







咲夜は、藤堂を睨んだ。




ほら、怒られるじゃんか。







「何でもないです。今ここで会っただけです。」





踵を返して、その場から立ち去ろうとする。







「良いじゃないですか。話を聞くだけなら。」






そう言ったのは沖田である。






「総司、まだこいつの疑いが晴れたわけじゃねぇんだぞ。」





「良いですよー。緊急事態に無関係のあたしがいたって邪魔なだけだし。」







「わかってんじゃねぇか。そういうこった。さっさと行け。」







そのまま、廊下を歩き出す。






後ろで、襖が閉ざされる音が聞こえた。







緊急だもんね…
緊急……緊急?!






「ねぇ!今日って何日?」






庭を駆ける隊士に尋ねる。








「今日は6月5日です。」







そう言って、走って行ってしまった。








「6月5日…」







記憶を探る。
自分の少ない知恵を絞って、過去に起きた事件を思い出す。










「あっ!」






今日は紛れも無い、新撰組にとって大きな事件が起きた日であった。





新撰組の名を幕末史に刻んだ激闘、池田屋事件が-



< 37 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop