千夜を越えて
「すみません。ちょっと思い出したもので…」
怒鳴られると思い、俯いて話す。
「思い出しただ?何をだ。」
言えない。
言ってしまったら、歴史が変わってしまう。
「…私事です。」
「なら、いちいち戻ってくんな。」
「良いではないか。」
緊迫した空間に、近藤の明るい声が響く。
「…こいつぁ関係ねぇんだぜ、近藤さんよぉ。」
「隊士も少ないんだ。いざって時に、役立つかもしれん。」
「こいつを連れて行くのか?」
近藤は頷いた。
「あたしっ、何でもやります!連れてって下さい!」
頭を下げる咲夜に、土方は怪訝そうな顔を見せるが、決心したように言った。
「わかった。許可しよう。」
「ありがとうございます!」
この事件の結果はわかっている。
言ってはいけないことも。
でも、少しでも良いから、ここに置いてもらっている恩返しがしたいと思った。