∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜
次の朝桜の花を見つけたショコラは、昨日にも増して興奮していた。
僕は思い出したようにつぶやいた。
「ショコラぁ。こんなときになんなんだけど、僕、1歳になったかも。
僕、一年前の桜が咲く頃に生まれたんだって」
ショコラは驚いた顔をすると、すぐ桜の木から飛び降りて来た。
「ホントか? もっと早く言えよ! おめでとう、宗一郎!」
ショコラはそう言うと、ざらざらした舌で、僕の顔中をなめ回した。
「よせよぅ! 大袈裟だなぁ」
僕は照れくさかった。
「おまえそう言うけどな、1年ってかなりスゴイんだぜ?わかってる?
とりあえずまた来年の桜が咲くまで頑張って1年間生き抜く事だ。そしたらまたここでなめ回して『おめでとう』を言ってやるよ!」
「そんな縁起でもない事言うなよっ」
僕は仏頂面で答えた。
「ショコラはいつ生まれたの?」
「俺が生まれたのは5年くらい前かな? 季節は分からないけど。俺もまだまだ未熟者だな」