∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜
 

 僕はもう公園に戻る事にした。

「シロ、ごちそうさまでした。今日は先に帰るね」

 シロは寝転んだまま、そんな僕の背中を無言で見送っていた。



 公園に戻った僕は、桜の花が今朝よりたくさん咲いていることに気付いた。

「わぁ……また咲いたよ。キレイだなぁ! 
 でも――…ひとりで見るのって、何でこんなに切ないんだろ?」

 桜の木を見上げるときは、僕の隣にはご主人だったり、ご主人の奥さんだったり、ショコラだったり……いつも誰かがいたからかな?


 ……。


 僕はベンチの下に潜り込み、もう本気で寝てしまおうと思った。

 でも、やっぱり出来なかった。



 僕はいつも食べ物をくれるオバサンのところに出かける事にした。

「おやクロちゃん来てたのかい? 今ご飯持ってきてあげるから、ちょっと待ってなよ」

 ショコラに連れて行ってもらった後、僕は度々そこを訪れていて、そのオバサンとも随分仲良くなっていた。

 オバサンは僕を“クロちゃん”と呼んだ。





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