かさの向こうに縁あり
今まで普通に話していたから全く気づかなかったけれど、何かがおかしい。


彼らが私を生粋の日本人でないと言うのは何故か。


その理由は、この状況が何も分からない私にも簡単に理解できてしまった。



「丁髷に……か、刀……!?」



驚いてまた一歩、後ずさる。


丁髷に刀、と言えば……


――江戸時代、武士の格好――


3人の男性は、江戸時代の武士の格好をしているらしかった。


でもどうして?

今は平成で、武士なんているはずもないのに。



「何がおかしい!」




いや、私はおかしくないよ。

明らかにあんた達がおかしい。


ああ、これは夢に違いない。

私の思考が狂い始めているに違いない。



呼吸を整え、そっと目を瞑って両頬を思いっきりつねる体勢をとる。


痛いか痛くないか……

痛くない方に、私は賭ける。



「おい、何をしている」



目をさらに強く瞑り、そして思い切って両頬をつねった。



どうかあの夢の続きでありますように。

この夢から覚めますように……



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