かさの向こうに縁あり
「……痛っ…い!?」



刹那、私の両頬に電撃のような痛みが走り、思わず目を開く。


それはまるで「これは夢ではない」ということを私に分からせようと、誰かが意地を張っているような。

そんな痛みだった。



「さっきから何をしている。異人めが!」



目の前にいる男性が視界に入る。

鬼のような形相で私を睨みつけていた。


睨んだって仕方がないんじゃない、とも言えず、私は言葉の代わりに睨み返した。


すると男性は眉をひきつらせ、口端を僅かに上げた。



「やんのか、餓鬼」



問われても、怖さからか何からなのか、もう声が出せない。

喉の奥で何かが詰まっているような感じがする。


3人の男性がほぼ同時に刀の柄に手をかけた。



「引剥ぎをしようと思っていたが……斬る」


「……っ!」



引剥ぎって、この前現代文で出てきた。

意味は確か、『通行人の衣服や持ち物などを奪い取ること』だった気がする。


まさに今、私はそれの被害者になるところだったんだ。

でもそれよりももっと嫌な言葉が出てきた。



―斬る――!



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