かさの向こうに縁あり
3人はそれぞれに刀を抜く。

一歩一歩、刀を構えて徐々に摺り足で寄ってくる。



こんな時に限って、この状況はどう考えても不公平だと思う。


1人の女に対して3人の男。


刀という武器を持っていながら何なんだろう。



そんなことを考えていたら、もう刺そうかというところまで近寄ってきていた。


私も一歩ずつ後ろに下がっていたけれど、不運にも背後の大木の存在に気づかず、もう背中が当たっている。

つまりはこういうこと。


どこにも逃げ道はない。


いつの間にか、よくドラマにありがちな展開になっている。



「さあ……逃げるか?」



さらに言ってしまうと、死ぬ以外に道がない。


そして未だに声が何も出てこない。


いや、出てこないと言うよりも、何故か出せないんだ。


口を開いて言葉を言おうとしても、音となって出てこない。

空気になって漏れ出るだけ。


まさか……



「すぐに楽にしてやるよ!」



そう言って目の前の男性が刀を勢い良く振り上げる。

他の2人も続けて振り上げる。



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