かさの向こうに縁あり
でも、安心しきったその瞬間――



ぐぅぅう――……!



腹の虫が大声で突然鳴いた。


そういえば私、昨日から何も食べてないんだった……!


恥ずかしさを隠したいけれど、何もできずに無駄に焦る。

とりあえず、赤面しながらも俯いた。


このタイミングでお腹が鳴るなんて、苑さんにご飯を要求しているみたいじゃない!

私と違って、自己主張が強いんだから……



「お腹空いてるの?……っていうか、空いてるんだよね?」



語尾に絶対「(笑)」って付いてますよね、と思いつつも、ゆっくりと深く頷いた。



「だったら言ってよー!ご飯ぐらい食べさせてあげられるから!」



戸惑いながらも微笑し、顔は徐々に赤みが引いていった。



「それに、ここに住むんだから。ね?」



苑さんは首を傾げて覗き込むようにして私を見ながら、そう言った。


こういうのを、“居候”って言うんだろうか。

今までに自分の家以外で生活したことがないから分からないけれど。


昨日からの江戸時代での生活が何だか新鮮だなあ、なんて。



< 60 / 245 >

この作品をシェア

pagetop