かさの向こうに縁あり
それからバランスが整った朝食を部屋に持ってきてもらい、私はそれをぺろりと平らげた。

苑さんはそれを見て驚きのような嬉しいような、そんな表情をしていた。



食器洗いなどを私が無理矢理に手伝い終わった後、借りた下駄を履き中庭に出て空を見上げた。


広く高い冬の澄んだ青空、そして薄い雲までが綺麗に見える。

そしてふいに思った。



なんか私の悩みなんて、ちっぽけだなぁ……なんて。



今まで部活や勉強のことで悩んでいたことなんて、とんでもなく小さい。

この時代なら、農民とか身分の低い人達の悩みの方が、遥かに大きいだろうに。


悩むのはやめようかな。

現代に戻れたら、の話だけれど。



気づけばそんなことを考えていた。

一度背伸びをしてから、沓脱石に足をかける。


その時、中から縁側へ、苑さんが手を拭きながら私の方に走り寄ってきた。



「その格好じゃ出かけられないだろうから、私の着物着てね」



そう言われて、はい、と頷きかけたが、縦に振ろうとした首を途中で止めた。



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