かさの向こうに縁あり
「新選組に殺されたの」



とんだ暴露話だと思った。

まるでドラマの中のような話だとも思った。


だから私はすぐにその言葉を理解できず、暫くの間目を開いていた。



その後少し頭の中を整理して、やっと理解できた。


――新選組がこの人の夫を斬ったということか、と。


そんなこと、言われてすぐに分かるはずだと、冷静に考えてみればそう思う。


……“そんなこと”、と言っては苑さんに申し訳ない。

彼女にとっては、物凄く大きなことなのだから。



長い沈黙の末、お参りが終わると苑さんはゆっくりと口を開いた。



「京では壬生村っていう所に初めいたから、壬生の浪士で“みぶろ”とか“みぶろう”って呼ばれていたの。ちょうどその頃かしら」



今でも呼んでる人はいるけどね、なんて苑さんは苦笑を浮かべて言う。


無理して笑ってほしくない。

悲しい時は思いっきり悲しめばいいんだ。


そう伝えたい思いだけが、私の脳から出ていく。

言葉を書かなければ、それは彼女には伝わらないということを忘れたかのように。



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