かさの向こうに縁あり
平助は私を探しに、連れ戻しに来たの?


そんなこと、私はちっとも望んでいないのに。

せっかく苑さんと仲良くなれて居場所もできたのに。


どうしてこんなに私はついてないわけ!?


……いや、今自分にキレても意味ないし、振り向いてはならない――となれば。



「あっ、ちょっと待ってよ!」



走って逃げるしかない……!


そう考えた私は勢い良く地を蹴り、全力で走り出した。


新選組が嫌で逃げたんだ、私は。

それなのに戻るなんて、今までの苦労が全て台無しになるじゃん……!



「妃依ちゃん……!ちょっと待ってよ!」



走り続けて数十秒、それでも平助は私を追って走っている。


走り続けて息が上がった彼の声が、下駄の騒がしい音と共に後ろから聞こえた。

そんなに私を逃がしたくなかったの、と聞きたくなるほど追ってくる。


徐々に息が上がってきて、さらには着物が乱れていく。

よく着物と下駄でこんなに走れるな、とつい自分に感心してしまった。



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