かさの向こうに縁あり
通りを歩く人々の目なんか気にせずに、私達は通りのど真ん中を人混みをかき分けて進んでいる。


途中、右に曲がって、直後に左に曲がった。



……でも、その選択は間違いだった。



「……!」



目の前に広がったのは、ただの細い道じゃなかった。


正面に木の壁がある――


そう、私は袋小路に入ってしまったんだ。


気づいてすぐに立ち止まる。

ひゅーひゅー、と息が漏れる音だけが喉から出ていく。


平助にも追いつかれ、ついに逃げ場がなくなった。



「はあっ……行き止まり、だね」



追いつかれてまず一言、そう言われた。

その言い方が、今の私に何となくむかつかせた。



「率直に聞くけど……」



息を整え一呼吸おいてから、彼は再び口を開いた。



「何で昨日の夜、逃げ出したりなんかしたの?」



本当に率直、ストレートな質問だな……


持ったまま走った為にくしゃくしゃになった懐紙に、握り締めていた矢立で、一文字ずつ適当に書いた。



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