ハルジオン。
「……発車、オーライ!」

駅長が鐘を鳴らす。

と同時に、汽車が連結を軋ませ、ホームから滑り出した。



何年、何十年と変わらない景色の中を、二両編成の汽車が遠ざかっていく。

心地よい振動が二人を揺らす。

とそこに、レールと併走して続く農道に一台のトラックが飛び込んできた。


「靖之!!」

真っ先に気付いた達也が木の窓枠を押し上げた。

長い髪を風になびかせ、その横から百合子も顔を出す。

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