亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
儚げな国王陛下のお顔が曇ることは、ここでは自分の事の様に思える程の悲劇なのだろう。
謁見の間にいる家臣達から矢継ぎ早に「陛下!」「陛下!お気を確かに!」「姉君様もお忙しいのです陛下!」「おお可哀想に!」…と、悲劇の舞台でよくある様な、しかし本気の台詞が飛んでくる。
何て王様想いの部下達なのだろうか。
…しかし彼等の中でもローアンが姉君として認識されてしまっているのは、少々解せない。
そして主の落ち込み様に、主以上に悲しんでいるのは言わずもがな……そこの変な魔の者である。
「ああ…陛下!私の陛下!そんなに悲しまないで下さいな!貴方のそんな感情の無い凍り付いた表情などこのノア、見とう御座いません!え?元からこんな顔?…存じておりますとも私の陛下!ノアは陛下の明後日を見るようなその美しいお顔をご寵愛しておりますとも!ああ陛下ー!」
瞬間移動でもしたのか。今の今までイブの傍で浮いていたノアが、いつの間にか玉座の後ろに回り込んでレトにしがみついている。
ハンカチーフで時折盛大に鼻をかみながら、ノアは独りで喚く。
ただでさえ謁見の間は声が響きやすいというのに。……非常に、うるさい。
「デイファレトってさ。なんかあれだよね。あれ、あれって言うかあの、あれしか言えないけど、綺麗にまとめるならなんて言うか、平和だよね」
「ええ。馬鹿みたいに平和でしょう」
この奇妙な光景を遠巻きに眺めながら、唯一第三者の視点を備えるイブとドールはお互いに頷いていた。