亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
「…とは言え、焦っても仕方ありませんね。ドールやノアからバリアンの悪口をいっぱい聞かされてますが、僕個人としては一度はバリアン王に会ってみたいです。歳も一つしか違わないらしいですし………会って話して、仲良くなりたいなあ…」

「私は仲良くなんか絶対にしたくないですけど。あ、でも陛下が仲良くしろと仰るなら従いますとも。今からでも笑顔の練習を致します」

ニマァ…と、何とも不気味な笑顔を浮かべるノアを、ドールが止めろとばかりに叩く。玉座の傍で行われる静かな漫才を傍目に、レトは手元の書状を丸めた。




「………では、気長に僕もバリアンの返事を待つ事にします。何かあればすぐにでも知らせて下さい。……………それと、姉さ…ローアンさんにも宜しくお伝え下さい。ルウナ王子にも、今度会ったら遊びましょうと。…お帰りの道中も、お気を付けて」


















「あんたの迎えも見送りも…どうしてわざわざあたしがしないといけないのかしら」

「ノア命令だから仕方無いじゃん」


城から一歩外に踏み出せば、肌を刺す地獄の寒波に思わず縮こまる。
書状を渡し終えたイブは 、ノアの勝手な命令により見送りに向かわせられたドールと共に、再び揃って元来た道を引き返していた。

見上げた空はどんよりとした厚い雪雲が隈無く占めている。帰路についている内に、また吹雪いてくるかもしれない。
日が沈めば、この国の地表は何処もかしこも氷点下の世界になる。春が近くとも、雪国はまだ雪国なのだ。


離れの城門まで二人並んで歩く間、他愛も無い話を交わしていると…城門まですぐというところで、不意にイブが呟いた。

「ドールは、もうバリアンに帰らないの?」

「………」


行きで交わした話題と同じ様なそれにドールは一瞬足を止めたが、すぐにまた歩き出した。
イブを追い越し、一歩前を進む。
物言わぬ彼女の背中を眺めていれば、こちらを振り返らぬまま、ドールは呟いた。


「………勿論、帰るわ。でもまだその時期じゃない。それに…」

城門の一歩手前でドールは立ち止まった。
同時に、門は独りでに口を開いていく。
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