亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
どうぞと言わんばかりに開け放たれた城門の前で佇む二人。
不意に背後の城を振り返ったドールの瞳には、何処か憂いの様なものが孕んでいるように思えた。
しばしの沈黙が続く中、静寂を破ったドールの声は、酷く小さなものだった。
「………こっちでやりたい事があるから……だから、帰りたいけど…帰れない………いえ、本当はあたし帰りたくないのかもしれないわ…」
「………?」
言っている事がいまいち理解できず首を傾げるイブ。
…やりたい事。彼女をこの地に止まらせる理由は、そこにあるのだろうか。
真剣な面持ちの彼女の横顔をまじまじと見ていたイブだったが…数秒の間を置いた後、突如「寒い」と呟いたドールがこちらを向いた。
「………何見てるのよ。ほら、さっさと帰った帰った。道中気をつけなさいよ。…まぁ、あんたに関しては心配なんてする必要は無いでしょうけどね、ご機嫌よう。あんたのところの女王陛下様によろしく伝えておいてちょうだい………あぁ、一つだけ…伝言する程大層な事じゃないけど…」
門の外へと押し出すや否や、城門は半ばイブを厳しく閉め出す勢いで素早く口を閉ざした。
…意志の無い無機質なこの門に悪意の様なものを感じるのは、気のせいだと思いたい。
「………もし今後、正式な国交以外でバリアンに野暮用がある時は……ちょっとくらい手を貸してあげてもいいわ…ってね。…あまり期待されても困りものだけれど」
雪雲で覆われた灰色の空の下。僅かな日光が差し込む中の暗がりの溜まり場に向かって、イブはドールに手を振りながら飛び込んだ。
…瞬間、何処からともなく現れた黒煙に身を包まれたかと思うと、そのままイブは“闇溶け”で姿を眩ました。
彼女の人一倍陽気な気配さえも喪失した閑散な場で、ドールは吹き付ける冷風にぶるりと身体を震わせて、そそくさと踵を返した。
暖かさを求めて戻る先の純白の城を眺めながら、ドールは鼻を啜り………誰にも聞こえないくらいの小さな声を、白い吐息と共に漏らした。
奏でるか細いそれは、濃い白で彩られて、そして風がさらって行った。
「………………傍にいてあげないと、いけないもの…」
不意に背後の城を振り返ったドールの瞳には、何処か憂いの様なものが孕んでいるように思えた。
しばしの沈黙が続く中、静寂を破ったドールの声は、酷く小さなものだった。
「………こっちでやりたい事があるから……だから、帰りたいけど…帰れない………いえ、本当はあたし帰りたくないのかもしれないわ…」
「………?」
言っている事がいまいち理解できず首を傾げるイブ。
…やりたい事。彼女をこの地に止まらせる理由は、そこにあるのだろうか。
真剣な面持ちの彼女の横顔をまじまじと見ていたイブだったが…数秒の間を置いた後、突如「寒い」と呟いたドールがこちらを向いた。
「………何見てるのよ。ほら、さっさと帰った帰った。道中気をつけなさいよ。…まぁ、あんたに関しては心配なんてする必要は無いでしょうけどね、ご機嫌よう。あんたのところの女王陛下様によろしく伝えておいてちょうだい………あぁ、一つだけ…伝言する程大層な事じゃないけど…」
門の外へと押し出すや否や、城門は半ばイブを厳しく閉め出す勢いで素早く口を閉ざした。
…意志の無い無機質なこの門に悪意の様なものを感じるのは、気のせいだと思いたい。
「………もし今後、正式な国交以外でバリアンに野暮用がある時は……ちょっとくらい手を貸してあげてもいいわ…ってね。…あまり期待されても困りものだけれど」
雪雲で覆われた灰色の空の下。僅かな日光が差し込む中の暗がりの溜まり場に向かって、イブはドールに手を振りながら飛び込んだ。
…瞬間、何処からともなく現れた黒煙に身を包まれたかと思うと、そのままイブは“闇溶け”で姿を眩ました。
彼女の人一倍陽気な気配さえも喪失した閑散な場で、ドールは吹き付ける冷風にぶるりと身体を震わせて、そそくさと踵を返した。
暖かさを求めて戻る先の純白の城を眺めながら、ドールは鼻を啜り………誰にも聞こえないくらいの小さな声を、白い吐息と共に漏らした。
奏でるか細いそれは、濃い白で彩られて、そして風がさらって行った。
「………………傍にいてあげないと、いけないもの…」