亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
グルグルと縛られた古いスーツケースを持った人物は、その足取りを緩めること無く、その先にある街へと真っ直ぐ歩き続ける。
方位磁石も地図も見ようとしないその迷いの無い歩みから、その人物が土地勘のある者であることを物語っていた。
めり込む砂地の歩き方も心得ている様で、全く足を取られることも無い。
…ただ、いくらこの地に慣れているといっても、頭上から落ちてくる熱い日差しだけは辛いものがあるらしい。
「………」
時折立ち止まってはマントのフードを深くかぶり直し、無言で太陽を睨んだ後に溜め息の様な深い息を吐いている。
そのまま間に小休止を挟みながらひたすら前へ歩いていれば……揺らめく蜃気楼に塗れた真っ赤な大地にぽつんと孤立する、待望の街の光景が視界に現れてきた。
国の中心部にある首都とは違い、バリアンの大陸の端であるこの辺りの街は、はっきり言って街と称するには小さい。
人口も少ない、物資も無い、金の回りも良くない。首都の郊外にある街々は何処も、国家の手がほとんど入っていないに等しい。故に治安はそれはそれはもう酷いものなのだが、贅沢は言ってられない。
黙々と歩いていると、揺らめく街の薄汚れた外壁が次第に視界の中で面積を占めてきた。獣避けの柵や夜に灯す松明といった外壁の細かな部分まで明確に見える。
ケースを持った旅人は、そのままの足取りで街の入口に歩み寄り、そして外との境目になる場所で…ピタリと足を止めた。
この街の入口は通常、吊り上げ式の大きな鉄の柵で封鎖されているのだが、何故か目の前の景色には、その見慣れた柵が何処にも無かった。眩しい頭上にちらりと目をやれば、地上にドスンと構えている筈の柵が何故かぶら下がったままだ。
直前に他の旅人か荷車でも通過したのかと、街の中を視線だけでキョロキョロと見回すが…入口の両端に立っている仏頂面の見張りも今日はいない。
…しかしながら人気の無い入口の代わりに……街の奥からだろうか。熱風に乗って、人々のざわめきが聞こえてくるではないか。
「…………いい、のでしょうか」
勝手に入っても。
方位磁石も地図も見ようとしないその迷いの無い歩みから、その人物が土地勘のある者であることを物語っていた。
めり込む砂地の歩き方も心得ている様で、全く足を取られることも無い。
…ただ、いくらこの地に慣れているといっても、頭上から落ちてくる熱い日差しだけは辛いものがあるらしい。
「………」
時折立ち止まってはマントのフードを深くかぶり直し、無言で太陽を睨んだ後に溜め息の様な深い息を吐いている。
そのまま間に小休止を挟みながらひたすら前へ歩いていれば……揺らめく蜃気楼に塗れた真っ赤な大地にぽつんと孤立する、待望の街の光景が視界に現れてきた。
国の中心部にある首都とは違い、バリアンの大陸の端であるこの辺りの街は、はっきり言って街と称するには小さい。
人口も少ない、物資も無い、金の回りも良くない。首都の郊外にある街々は何処も、国家の手がほとんど入っていないに等しい。故に治安はそれはそれはもう酷いものなのだが、贅沢は言ってられない。
黙々と歩いていると、揺らめく街の薄汚れた外壁が次第に視界の中で面積を占めてきた。獣避けの柵や夜に灯す松明といった外壁の細かな部分まで明確に見える。
ケースを持った旅人は、そのままの足取りで街の入口に歩み寄り、そして外との境目になる場所で…ピタリと足を止めた。
この街の入口は通常、吊り上げ式の大きな鉄の柵で封鎖されているのだが、何故か目の前の景色には、その見慣れた柵が何処にも無かった。眩しい頭上にちらりと目をやれば、地上にドスンと構えている筈の柵が何故かぶら下がったままだ。
直前に他の旅人か荷車でも通過したのかと、街の中を視線だけでキョロキョロと見回すが…入口の両端に立っている仏頂面の見張りも今日はいない。
…しかしながら人気の無い入口の代わりに……街の奥からだろうか。熱風に乗って、人々のざわめきが聞こえてくるではないか。
「…………いい、のでしょうか」
勝手に入っても。