亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~

男にするには勿体無い綺麗な顔立ちだが、その顔の左半分は大きな眼帯で覆われている。
彼に世界を見せてくれる頼りの右目は、薄い紅色という珍しい色を帯びている。

身に纏うのはダークブラウンの上下とも肌を露出しないきっちりとした衣服で、首には少々大きなマフラーをぐるぐると巻き付けている。
加えてその上からマントを羽織っているのだ。とてもじゃないが、酷暑のバリアンでは考えられない服装だ。

その不可思議な色合いの容姿や服装から、微笑みがよく似合うこのユアンという青年が元々バリアンの人間では無いことを物語っている。
異国の人間は基本的に異端者扱いされるこの国だ。迫害を受ける事など当たり前なのだが、そんな異端者であるユアンを前にするレヴィは、眉一つひそめることがない。
迫害するどころか、むしろその逆だ。

ユアンは、単身で各地を放浪する有能な医者だ。このユアンには、レヴィ達三槍は昔から世話になりっぱなしで頭が上がらないのだ。
バリアンに医者は少ない。そのほとんどが国家の息がかかっているのが現実だ。故に、ユアンの様な自由気ままな放浪医者は天の助けに等しい。
ユアン自身、患者が何者であろうとも患者は患者と捉えている様で、差別することが無い。

誰に対しても敬語で礼儀正しく、微笑みを絶やさないユアンはとてもいい医者だ。

申し分ない、いい医者なのだ、が。
















「その死体がどうかしたんですか?…よろしければ僕が検診してさしあげても良いですよ。…検診料は、別途料金になります。で、幾らくれるんですか?」

「………」





金には、超が付くほど、がめつい。
悲しいことに。



この好青年な腕の立つ放浪医者は、残念ながら第一に金を優先する様な人間である。
「別、途、料、金」…と人懐っこい笑顔で駄賃をしつこく要求してくるユアンを、レヴィはじとりと睨み付けた。


「…見るだけでも金をとるのか。さすが金の亡者ユアン先生様だな」

「そんな挑発には載りませんよ。…ほら、硬貨一枚くらい持っているでしょう。ちょっとジャンプしてみなさい」

要求が段々と爽やかな脅しになってきたところで、レヴィは小さな硬貨を一枚投げてよこした。
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