亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
毒殺とも考えられたが、毒による影響は死体に現れていないことからして薬物の可能性は低い。
では、何故死んだのだろうか…と注意深くレヴィが観察した結果……他殺であるという証拠を、ようやく見つけ出したのだ。

「…額の辺り、よく見てくれ」

レヴィの長い人差し指は、ゆっくりと死体の額に近寄り、指の腹でその変色した肌を一撫でした。 言われるがまま、ユアンがダーバンに覆われた死体の額を覗き込めば…。


「………ほっほう。穴ですか」


緩い弧を描く額の真ん中には、指一本が入るか入らないかくらいの綺麗な穴が空いていた。しかもそれは見事に貫通しているらしく、向こう側の砂壁が微かに見える。

死体の背後に回り込んで見れば、後ろは血痕と思われる黒ずんだ染みが壁一面に盛大に飛び散っていた。
なるほど。どうやら彼は、頭を貫かれて即死したらしい。
他に外傷も無いことから、恐らく事はあっという間だったのだろう。

…だが、死体は真正面から攻撃を受けている。少しの抵抗も出来なかったのだろうか。


「…最初は弓か何かによる痕だと思ったが…違う。…仮に弓で貫かれたとしても、引き抜く際に傷が広がる筈だ。…しかしその風穴は見事に均一で綺麗なものさ。………もっと別の、違う武器だ」

「…確かに。弓ではこんな綺麗な痕になりませんねー。頭蓋骨も損傷が激しくない。中の脳味噌も……綺麗に抉られていますねー。相当大きな力で貫かれないとこうはなりませんねー」




不可解な額の風穴を、レヴィはじっと睨み付けた。
敵も、日々軍力を進化させている。新しい軍事力でも手に入れたのだろうか。
武器の特定は、今後の戦いに大きく影響する。



「………弓よりも強力で、速さもあり、最小限の痕しか残さない…。………………そんな武器があるのか、ユアン」

壁に寄りかかって腕を組みながら思慮に耽るレヴィに、ユアンはゆっくりと腰を上げて口を開いた。







「さて。………生憎、そういった分野は専門外ですので。僕には何とも言えませんねー」
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