亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
死人相手では医者の力も糠に釘ですねー…と呟いて肩を竦めて見せると、ユアンは早々にフードを被り直した。
結局死体の謎は分からず仕舞いのままだったが、一つだけ分かったことがある。
どうやら先程払った銅貨は返してもらえないという事だ。
干からびた部下の屍をじっと見下ろすレヴィを横目で見やり、ユアンはやれやれと言わんばかりに溜め息を吐いた。
「…放置していてもどうせ街の人間がその内処理をしてくれると思いますけど?……どうします?」
「………埋めてやりたいのは山々だがな。…もう、街を出る………長居は出来ない」
「相変わらず忙しいですねー」
首都からだいぶ離れた街とはいえ、油断は出来ない。
老長オルディオやロキに次いで第一級レベルのお尋ね者のレヴィは、同じ場所に長く止まることは出来ない。
民の大半はレヴィ達反国家組織に味方してくれるが、全員というわけではないのだ。
高額な賞金目当てで、偽善者面で近付いてくる人間も少なくはない。
レヴィは物言わぬ死体の前で屈むと、部下の腰元に挟まれていた使い古された短剣を抜き取った。手早く自分のベルトに差し込むと同時に、レヴィはポツリと呟いた。
「持って行くぞ………お前の魂」
街を後にした二人は、砂漠の全く人気の無い辺りまで歩いた。
後ろに続くユアンは余程頭上の太陽光が嫌いなのか、深く被ったフードの内に覗く表情にはいつもの微笑みが欠片程も無い。
彼の青白い肌を見る度に少しは肌を晒すべきだと言いたいが、ユアンの体質上、それは出来ないらしい。
二つの寂しいシルエットを引きずりながらしばし歩いていたが、何の前触れも無くレヴィの正面の地面が盛り上がったかと思うと、砂の小山から巨大な獣…バジリスクが姿を現した。
手の平サイズの巨大な牙が並ぶ口が、粘着質な唾液を絡ませてゆっくりと開く。
「待たせたな、ベル」
レヴィがそう言って岩肌の口を小突いてやれば、ベルという名のバジリスクは嬉しそうに吠えた。