亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
その見た目とはギャップのありすぎる甘えっぷりに、背後のユアンはフードの中で微かに苦笑を浮かべた。

何をどうすれば猛獣バジリスクがこれほどにまで可愛く懐くのか…ユアンには理解出来ない。

岩山の如きベルの背中に軽やかに飛び乗ったレヴィに続き、ユアンも手慣れた様子でその背に乗る。事実、こうやってバジリスクで移動するのは初めてではない。月に何度か、こうやって放浪医者のユアンはレヴィと落ち合う事になっている。

用事は勿論、医療である。


「最近はどうですか…オルディオのお爺さんのお身体は。……最後に診たのが二週間位前ですかね」

「…変人っぷりを除けば、おかげ様で相変わらず元気な爺だ。と言っても、元気に見せているだけの様な気もするがな。……たまに、咳込んでいる」

「なるほど。では、今回は念入りに診させてもらいましょうかねー」

素人では使い道も全く分からない医療道具がたんまりと入っているであろう、大きなスーツケースを抱え直すユアンを横目で眺めていたレヴィの目は、彼が背負う第二の大きな荷物に注がれた。
背中に背負っているのは、布にくるまれた長細い荷物だ。古びたスーツケース一つで放浪するユアンだが、今日はまた大きな荷物を一つ加えている。

「…背中のは何だ?」

尋ねる程に興味があった訳では無いが、ほとんど反射的にレヴィの口は呟いていた。目敏いですねー、と微笑むユアンは背負う荷物を一瞥する。

「薬を調合するための器具ですよ。まあ、大したものじゃありませんがねー…見ます?」


「…遠慮する。どうせ見ても分からないからな」

「でしょうね」

ちょっと得意げに笑うユアンを一睨みすると、レヴィは突然ベルの手綱を引いて急発進させた。唐突なベルの動きに、振り落とされそうになったユアンは慌てて屈みこむ。ゴツゴツとした足元の岩肌になんとか掴まり、安堵の息を吐いた。

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