亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~

視界を覆い尽くす大量の砂埃を撒き散らしながら、二人を乗せたベルは何も無い砂漠を泳ぐ。熱い風を全身に浴び、はためくマントの裾を押さえて口笛を吹きつつ周りの景色を眺めていると…前を向いていたレヴィが不意に声をかけてきた。

「そうだ……オルディオのついでに、もう一人診てくれないか」

「別途料金になります。……アハハ、そんなに睨んだって割引はしませんよ。それで、診てもらいたいというのはどなたですか?」

金になると分かればこの医者、本当に容赦無い。
激しく揺れるベルの背中の上で、胸ポケットから取り出したお手製の算盤を器用に弾くその姿は、苛立ちを通り越して呆れてしまう。
嬉しそうに算盤を眺めるユアンから視線を外すと、レヴィは溜息を吐いた。

「………小娘が一人。……ちょっと前から隠れ家に置いてやっている」

「攫ってきたんですか?……冗談ですよー。その娘さん、何処か悪いんですか?」




「………悪いと言うか…どう言えばいいのか分からないが。……………とりあえず今は、何でも口にしないようにとライが教育しているところだ」



「……………話がよく見えませんが」




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