亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
熱心な教育の甲斐あってか、サナは三日目にして一人で立ち上がる事が出来るようになった。
サナが立った!立った!立ったんだよ!!…と我が子の成長振りに涙する母親の様に、ライは感激していた。対し、ふーん、とリディアが興味も無さそうに返事をしたのは言うまでも無い。
そして教育五日目にして、サナの教育は直立から歩行に転じていた。
とりあえずサナを立たせ、少し離れた所からライが歩き方のお手本を見せる。右足、左足…と足を前踏み出す動作を何度も何度もボーっとしたサナに見せる。
歩いて、右足、左足…と声をかけても、恐らくサナには何も伝わっていない。しかし同じ動作を何度も見せれば、自ずと真似をしてくれるようになる。
…それにサナは、ライが傍にいれば一日中彼を凝視している。
程無くしてサナはゆっくりとだが、ライの動作を真似てか、片足を前へ少しだけ踏み出す動きを見せた。
…が、体勢が半ば片足立ちになるとバランスが一気に崩れるらしい。途端にサナの身体はぐらりと傾き、倒れてしまう。
しかも彼女の身体は、受け身を取るという反射さえも忘れているらしい。転べば顔面から叩きつけられてしまうため、危険極まりないのだ。
故にサナが少しでもバランスを崩せば、反射的にライが半ばスライディングしながら受け止める。
その動きは数を増すにつれて俊敏なものになっている。見物人のロキは独り頷いていた。
「ナイスキャッチー」
手の平サイズの果実をガリガリと齧りながら、ロキは親指を立てて言った。