亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
危ない場面になっても傍観者でい続けるそんなロキを、ライはじとりと睨みつける。これは見せ物ではないのだから。
「……そこの暇を持て余している黒槍さん…少しは手伝ってくれませんか…」
「却下。理由は見ている方が面白いからだ。…それに見た感じ、お前一人で充分手は足りてると思うがな」
そう言って、ロキは素知らぬ顔で再び果実に歯を立てる。…事実、サナの世話はライ一人の働きでしっかりと成り立っていた。
こうやって助けを求めるくせに、何だかんだと一人でやってのけてしまう。
ただ…この青年は自分よりも他人を第一とする良い子なのだが、代わりに自分が傷付いても構わないという精神はあまりいただけない。
そして案の定、ロキの返答に眉をひそめたものの愚痴をこぼそうともせず、ライはサナを支えながらのろのろと立ち上がった。
「サナ、立てる?…少し休憩しようか。喉は渇いた?」
「アゥー」
「そう?じゃあ後で飲もうね」
…今ので何故会話が出来ているか分からない。
欠片程になった果実をロキが口に放り込んだ途端、背後から飛び込んできた小さなシルエットがロキの脇をすり抜けていった。
二人の元に走り寄っていくのは、ライがサナと一緒に拾ってきた小さな赤い猫…ティーラの子猫だ。
子猫はライから『ティー』という名前を付けてもらっていた。とても野生とは思えないほどに人懐っこく、あの近寄りがたいオーラを放つレヴィにも平然と甘えにいく程だ。
身の丈よりも遥かに長い尻尾を立たせ、ティーはボーっと座り込むサナの肩に飛び乗ると、そのままちょうど背を向けていたライの背中にすり寄っていった。
砂漠の真下にあるこの小さな隠れ家は、地上よりも温度が遥かに低い。
砂漠で生きるティーには少しばかり寒い様で、よくこうやってライの背中にくっついてくるのだ。
人肌の温かさ、特にライの体温が一番お気に入りらしい。
「ティー、寒いのかい?」
ニャーニャーと鳴いてライに甘えるそんなティーの姿を、サナは瞬きもせずに凝視している。