亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~

しばし眺めた後、今度はティーとライの背中を交互に見詰め始める。
常に一点しか見ないサナにしては非常に珍しい動きだ。
だが、休憩の合間にダガーの手入れをしているライは気付いていない。


「………ァー…」


数十秒の間を置いた後、不意に小さな声を漏らしたサナはそっとライに近寄ったかと思うと。






……ライの背中に、ぴとりとすり寄った。







―――途端、ライの身体が面白い程に跳ね上がった。
ひたすら傍観していたロキは、思わず果実の種を噴き出した。









「………ち……ちょっ…ちょおおおおおっ…と…!?……サナ!?」

まだ若い思春期の純粋な青年には、刺激が強かったらしい。
震えた後、一瞬硬直し、耳まで真っ赤になり、パクパクと金魚の様に口を開けたり閉めたりと繰り返し、あちこちに目を泳がせ……つまりは重度の混乱状態に陥ったライは、ぎこちない動きで背中に貼りつくサナを振り返る。

先程までのサナの教育で倒れた彼女を受け止めたりと散々接触してはいたが……あれとは訳が違う。これは予想だにしていなかった不意打ちだ。


目を向ければ、美少女がくっついている。どうやら夢幻ではないらしい。




種を噴き出して蒸せてしまったらしいロキはというと、あらかた咳き込み終えると片手で顔を覆いながら大きな溜め息を吐いた。

「…すげえ。俺、今、純愛見た。イチャイチャしてんじゃねえよと怒鳴りたいのに……あー何だろこの言葉に出来ない気持ち!この柔らかいパンチ!他人事なのにキュンキュンする!俺の心臓、なんか生暖かい!痒い!」

「あーーー…」と呻きながら頭を抱えて独りときめきに悶絶するロキを、この人は何を言っているのだろう…と冷めた目で見詰めるライだが、彼の思考回路の九割…いや十割はそれどころではない。



当のサナはライの体温がお気に召したのか…非常にリラックスした表情のまま、寝息を立て始めた。



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