亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
全体重をライの背中に預けて眠ってしまったサナを、ライはただただドギマギとしながらちらちらと見るしかなかった。

甘えるティーが貼りついてくるのとは、状況は一緒でもこれは全く違う。
別に、女性に耐性がついていない訳ではない。とても綺麗な女性もたくさん見たことがある。
…だが何故か、このサナに対しては何処かでビクビクと恥ずかしがる自分がいるのだ。

教育モードの時は何でも無いのに、普段のふれ合いではどうも自分はぎこちない。


このぎこちなさが何から来るのか、ライにはよく分からない。






「………何してるの。ロキ…」

いつの間にか外から帰っていたらしいリディアが、冷めて乾いて干からびた視線でロキを見下ろしていた。
真っ赤な顔で助けを求めるかの様にこちらを見てくるライと目が合ったが、それはすぐに背けられた。興味が無い様だ。


「ロキ。あんたの部下から一つ報告。受けてる」

胸の辺りをさすって深呼吸を繰り返していたロキに向き直ると、不意にリディアの目つきが変わった。
彼女の纏う空気がピリリと張り詰めるや否や、ロキは真剣な表情を浮かべて口を閉ざした。


「で、何てさ?」

「…首都近辺の、北側の街……先月から諜報任務、あんたの部下を一人……潜入、させていたわよね?」

敵の出方や世間の流れを知るため、常に行う諜報任務では色々な街に部下を放っている。
国境側の街を探る白槍に対して、ロキの率いる黒槍は首都近辺の街を任されていた。

リディアの言う街にも、ロキの部下が一人、確かに先月から潜ませていた。その部下が、どうかしたのだろうか。


次第に訝しげな表情を浮かべていくロキをしっかりと見据えたまま、リディアはポツリと言った。






「………死体、見付かった。………死んでた」






リディアの口からは、それ以上の言葉は出なかった。
黙りこくる互いの間に、奇妙な沈黙が漂う。聞こえるのは、ぼんやりと輝く小さな篝火がはぜる音だけ。
今の今までサナ相手にあわあわと狼狽えていたライも、リディアからの衝撃的発言に息をのんで固まった。
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