亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
ライとサナに挟まれてうずくまるティーは、つぶらな瞳で不思議そうに一同の顔を見上げていた。

何処かピンと張り詰めた空気の沈黙を破ったのは、ロキの深い溜め息だった。
相棒のレヴィとは正反対の性格のロキは、いつも陽気で気分屋な男だ。彼は仲間に対して、笑み以外の表情をあまり見せない。
だからこそ、今彼が浮かべている難しい表情は酷く新鮮に見えたのかもしれない。

顔を上げたロキは、少しだけ怖い…とライは思った。少年の様に輝いていた朱色の瞳は、今だけは鋭利な光と影の双方を孕んでいる様に見える。
この黒槍は、驚く程明るい陽気と、獣の如き鋭い狂気の明暗を持つ変わった男だ。



「いつ死んだ?」

ようやく口を開いたかと思えば、出て来たのは物静かな怒気を孕んだ低い声音が一つ。
どうすることも出来ず、微動だにしないまま静かに見守るライは、鳴き声を上げようとしたティーの小さな口を咄嗟に押さえた。


「…詳しいこと、分からない。でも、死体の様子から見て、最近、だと思うって…」

見れば思わず目をそらしてしまいそうになる怖いロキの眼光にも、リディアは冷静な態度で淡々と言葉を繋げていた。

「死因も、よく分からない。事故とかではなくて、死体は他殺死体……誰かに殺された痕、あったって」

「…痕って…どんなだ」

致命的となった傷痕で、おおよそだが殺した相手側の素性が予測出来る。刀剣か、槍か、もしくは鈍器によるものだろうか…と予想するロキだったが………対するリディアの答えは、全く想定外のものだった。


「…ここ」

彼女はポツリと呟いたと同時に、その細い指で自分の額の真ん中を指差した。




「……綺麗な風穴が一つ。槍でも弓でもない痕。……今まで、見たことのない痕、だったって…」

「………風穴?」

「レヴィの部下も、一人殺された。……そっちも同じ……額に風穴、だったって………レヴィ、朝から現地に行っている。今日、ユアンを迎えに行く予定でもあったから…」
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