亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
殺された部下達の共通する不可解な傷痕。
部下を殺した相手が何者なのか、凶器は何なのか…問題とすべき点は多々あるのだが。

「………そう、か………死んだのか…。………そうか」

そう言ってロキはまた、深い溜め息を吐いた。
元々殺生を好まないらしい彼からすれば、身内の死は自分の事の様に思えるのかもしれない。しばし呆然と、薄暗がりに溜まった仄かな闇を見詰めた後、ロキはゆっくりと重い腰を上げた。その眼光は未だに暗い影を落としたままだ。

「…死体、その後どうなった?」

「人通りの多い街の門前で、見付かったから………役人に、持って行かれたって。幸い、こっちの人間だってこと、ばれてない。でも、死体、引き取りに行くのは危険過ぎる。だから…」

「……無縁仏のまま、名無しの墓に埋めてもらおうっていうのか?…冗談じゃない…!」


苦虫を噛み潰したかの様な表情で舌打ちをするや否や、ロキはリディアを押しのけてズカズカと出口のある方へ歩いた。彼の事だ、恐らく大胆不敵にも街に乗り込んで部下の亡骸を奪いに行くつもりなのだろう。
しかしそれはあまりにも危険過ぎる行為だ。ロキにとっても、この三槍にとっても。

「…ロキ…」

これは不味い、と即座に判断したリディアは彼を止めようとその肩を掴んだが、軽く身を捩ってすぐに振り解かれてしまった。その振る舞いは乱暴ではなかったものの、力強いものだった。

「……ロキ…危険過ぎます…!」

始終口を閉ざして恐る恐る二人の会話を聞いていただけだったライも、唐突なロキの行動には流石に口を出さざるを得なかった。懇願する様なその声は響き渡り、淡い眠りについていたサナがパチリと目を覚ました。ぬくぬくと温かく心地よいライの背中から身体を離し、少しずつ遠ざかって行くロキの背中をぼんやりと眺める。
その大きな背中は、若々しい青年のエネルギーを感じさせる反面で。
何処か、重々しい何かを背負っている様な…彼にしか理解出来ないであろう暗闇を纏っている様にも見えた。

「ロキ…!」

「…うるせえぞお前ら………愚痴なら後で幾らでも聞いてやるよ…」

一度もこちらを振り向こうとしないその背中から、苛立ちを孕んだ低い声が聞こえてくる。…こうなると、彼を止める事は出来ないという事を、ライ達は知っている。
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