亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
地上の砂漠に繋がる隠れ家の出入り口へ。ロキの足並みは止まる気配が無い。頭上の穴からは、地上に降り注ぐ真昼の陽光が微かに差し込んでいる。
第一級のお尋ね者である身ならば、外出は太陽の眠る時を選んだ方が良い。だが、夕暮れまで時間はまだだいぶある。
レヴィの様に慎重に行動するならばまだいいが…今のロキは半分頭に血が上っている。
そんな人間がとてもじゃないが慎重な行動など取れる訳がない。
「ロキ!」
無駄だと分かりながらもライは叫んだ。手入れがまだ途中のダガーを鞘に納め、弾かれたように立ち上がる。ここは無理やりでも彼を止めなければ…と、ライがその場で駆け出そうとした矢先、だった。
「待ちぃや、ロキ」
鶴の一声とは、きっと彼の声に違いないだろう。
慌てふためく二人の言葉を振り切り、もう止まらぬであろうと思われたロキの足は……突如介入してきた、嗄れた第三者の声によってピタリと止まったのだ。
背後から聞こえてきたその声に、ライとリディア…そしてロキはゆっくりと振り返った。
暗がりが住まう空間の奥。彼等が視線を注ぐその先には、篝火を背景にした小柄なシルエットが一つ。
その姿はぼんやりとしていたが、三人がその声の主を見紛う筈が無い。
そこに佇んでいるのは、我等が老長、オルディオなのだから。
「……オル、ディオ…」
気配も無くいつの間にか背後に佇んでいた主の姿に、ライはゴクリと息をのんだ。
老長オルディオは、一日中常に瞑想に耽っている。飲食も凡人より明らかに少なく、そのせいか身体付きは骨と皮だけの様な酷く貧相なものだ。
骸骨の形状を浮き彫りにした様な赤褐色の顔には、窪んだ目元に嵌るギョロついた眼球。瞑想で常に皺だらけのまぶたに覆われているそれは、今大きく見開かれている。
延び放題の長い白髪と髭に覆われた顔からは、何の感情も読み取ることが出来ない。
この老人は、言うなれば生きた化石の様な人間だ。このバリアンという国で、国家を相手に反旗を翻した民の中の長。
唯一の希望として多くの民に崇められる、不動の老人。
第一級のお尋ね者である身ならば、外出は太陽の眠る時を選んだ方が良い。だが、夕暮れまで時間はまだだいぶある。
レヴィの様に慎重に行動するならばまだいいが…今のロキは半分頭に血が上っている。
そんな人間がとてもじゃないが慎重な行動など取れる訳がない。
「ロキ!」
無駄だと分かりながらもライは叫んだ。手入れがまだ途中のダガーを鞘に納め、弾かれたように立ち上がる。ここは無理やりでも彼を止めなければ…と、ライがその場で駆け出そうとした矢先、だった。
「待ちぃや、ロキ」
鶴の一声とは、きっと彼の声に違いないだろう。
慌てふためく二人の言葉を振り切り、もう止まらぬであろうと思われたロキの足は……突如介入してきた、嗄れた第三者の声によってピタリと止まったのだ。
背後から聞こえてきたその声に、ライとリディア…そしてロキはゆっくりと振り返った。
暗がりが住まう空間の奥。彼等が視線を注ぐその先には、篝火を背景にした小柄なシルエットが一つ。
その姿はぼんやりとしていたが、三人がその声の主を見紛う筈が無い。
そこに佇んでいるのは、我等が老長、オルディオなのだから。
「……オル、ディオ…」
気配も無くいつの間にか背後に佇んでいた主の姿に、ライはゴクリと息をのんだ。
老長オルディオは、一日中常に瞑想に耽っている。飲食も凡人より明らかに少なく、そのせいか身体付きは骨と皮だけの様な酷く貧相なものだ。
骸骨の形状を浮き彫りにした様な赤褐色の顔には、窪んだ目元に嵌るギョロついた眼球。瞑想で常に皺だらけのまぶたに覆われているそれは、今大きく見開かれている。
延び放題の長い白髪と髭に覆われた顔からは、何の感情も読み取ることが出来ない。
この老人は、言うなれば生きた化石の様な人間だ。このバリアンという国で、国家を相手に反旗を翻した民の中の長。
唯一の希望として多くの民に崇められる、不動の老人。