亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
あの骨と皮だけの身体の何処に…と、驚く程の力をオルディオは時に見せる。
鈍痛で疼く後頭部を押さえながら、ロキは再び遠ざかっていく老人の小さな背中を見詰めた。
慌てて駆け寄ったリディアに支えられ、オルディオは暗がりの奥へと静かに姿を消していった。

老長去りし後の異様な空気が漂う中、事の成り行きをただただ見守っていたライは居心地が悪そうに目を泳がせていた。
仲間内のこういった騒動は別段珍しい事ではない。元々性格が正反対のレヴィとロキは頻繁に衝突するし、リディアも交ざって手に負えなくなることもしばしばなのだが…それでも、嵐の過ぎ去った後の静寂には慣れる事が出来ない。

ここは何か切り替えの転機となる行動の一つでも起こすべきか…。
軽く咳払いでもしようとライは口を開こうとした。…だが、真面目な青年の気遣いは杞憂に終わるらしい。

…嫌な沈黙を破ったのは、当事者であるロキの大きな溜め息だった。



「………あー…」

頭上の穴から差し込む淡い陽光を見上げながら、何だか疲れ切った意味の無い声を上げるロキ。
先程までの苛立った彼は何処へやら。今は、まるで抜け殻の様だ。

「……ロ、キ…?」

恐る恐るライが彼の名を呼べば…ロキはゆっくりと俯き、自嘲的な笑みを浮かべて呟いた。


「…小僧…か。………爺さんから見れば、どいつもこいつも小僧みたいなものじゃねぇかよ…。……………………変わってねぇな……俺は…」

「………」




壁に背中を預けて座り込んだまま、ロキはそこから動こうとはしなかった。
フードの内で溜め息を繰り返し、何やら独り言を呟いていたが、その声はあまりにも小さく聞き取ることが出来なかった。
普段の陽気な態度とは百八十度異なる彼の様子に心配になるが…ライはそれ以上声をかけなかった。



「………サナ、もう一度歩いてみようか」

そっとロキから距離を取ると、ライは小声でサナに話しかけた。
何も分かっていないであろうサナは、やはりきっと分かっていないのだろうけれど。

首を傾げて、笑いかけてくれた。
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