亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
今は亡き前バリアン王である老王の側近として仕えていたケインツェルは、主の死から三年の歳月が経った今でも、変わらず側近のままだ。
ウルガも、あの忌まわしい老王謀殺の大事件以降も兵士として城に身を置いていた。
勿論、 現在のバリアン王の下でである。

三年前までは互いに側近、一兵士と身分差のある者同士だったが、ウルガは今、バリアン国家の軍力『赤の武人』の総大将を勤める人間である。
軍部のトップとなった今、側近のケインツェルに深々と頭を下げることは無い。


敵を逃がした事に対し、まるで反省の意を見せないケインツェルを下から更に強く睨み上げれば、忌々しい銀縁眼鏡の奥で彼の目が盛大に笑った。


「良いんじゃないですかぁ?白黒両方をいっぺんに捕まえてしまったら…………………これから先、面白くなくなりますしねぇ!フフフフフフ!」

「……下郎め」

毎度思うのだが、この男の頭には一体何が詰まっているのだろうか。
自らの手を汚さず、いかにして面白く、楽しく、そして残虐に駒を進めることが出来るのか…争いを遊戯と錯覚しているケインツェルの考えは、真面目な武人であるウルガからすればあるまじき事だ。

故に、ウルガは味方であるこの側近を毛嫌いしている。その才覚を認めても、隠す気の無い非道な人格は認めない。
出来ればこの男を側近から引きずり落としたいものだが…ケインツェルは、頭の良さだけで側近に置かれている訳ではないのだ。


彼は、普通の人間よりも並外れた虚弱体質で、常に死と隣り合わせにあり…。
加えてケインツェルは、普通の人間ではない。

人あらざる特異な力を持っている。
創造神アレスが生み出したと言われる、古文書にも記された彼等の存在を、古より…『理(ことわり)の者』と呼ぶ。


ケインツェルの持つ能力とやらが一体どんなものなのか、ウルガはあまり知らない。






「そうは申しましても、まぁ貴方から言わせれば非常に不愉快でしょうがこう見えて私も何かと忙しい身でしてねぇ…フフフ!…警備にまで手が着かないのですよ」
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