亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
事実、ケインツェルはこのところ別件で動いているらしい。しかもそれが内密で行われているらしく、味方のウルガの耳にもその内容は一向に入ってこないのだ。
ただでさえ何をしでかすか分からない男だ。内密など…ろくな話で無いことは確かだろう。
「………隠れてこそこそと…一体何を企んでいる…」
「おやおや、企むだなんて!人聞きの悪い言い方はよして下さい。別に独断で動いている訳では無いのですから……ねぇ、そうでしょう?………………陛下」
そう言いながらウルガから視線を外し、ケインツェルはくるりと真正面に向き直った。
篝火の明かりでキラリと反射する銀縁眼鏡は、この広大な部屋の、その奥の………明かりの手も届かない暗がりの向こうを見詰めた。
静寂と闇にまみれたその奥には、一見何も無いように思えるが。
…そこにある巨大な存在感と、ピリピリと張り詰めた空気をすぐさま身体で感じるだろう。
目を凝らして見れば…そこには、高さはさほど無い短い階段の段差が明暗で浮き上がっているのが分かる。
大理石の階段。
登った先にぽつんと孤立するのは、傷だらけの古い……偉大な、赤い椅子。
―――玉座だ。
このバリアン国家の全ての頂点を意味する、ただ一つの宝。
年期の入ったそれは数多の歴史を見てきたのだろうか…やけに重々しく、過度な威厳を放っている。
そしてそこに腰掛ける事を許されるのは、神に許された者だけ。
神の選んだ、神の寵愛する者だけ。
このバリアン国家の一番上に立つ人間。
この国の、王という威厳高き存在のみ。
その雲の上の様な気高い玉座の主は、側近の意味深な笑みに反応したのか。
暗闇の奥から、嘲笑にも似た乾いた笑い声が微かに聞こえた気がした。
次いで室内に響き渡るその声は、声変わりを終えた青年の、若々しい低い声音だった。
「………………その事だが。………万事順調なのか…?」
ただでさえ何をしでかすか分からない男だ。内密など…ろくな話で無いことは確かだろう。
「………隠れてこそこそと…一体何を企んでいる…」
「おやおや、企むだなんて!人聞きの悪い言い方はよして下さい。別に独断で動いている訳では無いのですから……ねぇ、そうでしょう?………………陛下」
そう言いながらウルガから視線を外し、ケインツェルはくるりと真正面に向き直った。
篝火の明かりでキラリと反射する銀縁眼鏡は、この広大な部屋の、その奥の………明かりの手も届かない暗がりの向こうを見詰めた。
静寂と闇にまみれたその奥には、一見何も無いように思えるが。
…そこにある巨大な存在感と、ピリピリと張り詰めた空気をすぐさま身体で感じるだろう。
目を凝らして見れば…そこには、高さはさほど無い短い階段の段差が明暗で浮き上がっているのが分かる。
大理石の階段。
登った先にぽつんと孤立するのは、傷だらけの古い……偉大な、赤い椅子。
―――玉座だ。
このバリアン国家の全ての頂点を意味する、ただ一つの宝。
年期の入ったそれは数多の歴史を見てきたのだろうか…やけに重々しく、過度な威厳を放っている。
そしてそこに腰掛ける事を許されるのは、神に許された者だけ。
神の選んだ、神の寵愛する者だけ。
このバリアン国家の一番上に立つ人間。
この国の、王という威厳高き存在のみ。
その雲の上の様な気高い玉座の主は、側近の意味深な笑みに反応したのか。
暗闇の奥から、嘲笑にも似た乾いた笑い声が微かに聞こえた気がした。
次いで室内に響き渡るその声は、声変わりを終えた青年の、若々しい低い声音だった。
「………………その事だが。………万事順調なのか…?」