亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
今から約五年前の、歴史に名高い『六年戦争』の終結を機に新王として即位したローアン。
その後の一、二年で荒廃していた自国の統一を終えると同時に、彼女を含めた三国の王の元に創造神アレスによる神の御告げが舞い降りてきたのだ。
その内容は言わば……世界に対する警告、だった。
―――神の定める時までに、荒れ果てた三国に善なる王を立たせ、最善を尽くして偏った世界の均衡を保つこと。
それ叶わぬならば、世界は無と化す。
太陽と月は上らず、天は闇と化し、大地は海に消え、生なる者の世も、死ぬる者の世も消え失せ…。
(一切の姿が、無くなるであろう…)
昔、神声塔で聞いた神の御告げの一部を思い返しながら、同時にローアンはがむしゃらに走り回った過去の記憶に静かに浸った。
あの神の警告を受けてから、ローアンは世界の均衡とやらを保つために実に様々な対策を施してきた。
まず手始めに行ったのが、以前から考えてきた異国との国交だった。
世界を相手にするならば、一致団結する他は無い。それがせめて形だけでもと、当時のバリアン王である老王に使いを送ったのが、大仕事の始まりだった。
次いで同時進行で行ったのが、長年王が不在で国政が完全に途絶えていたデイファレトでの、行方不明となっていた王族の捜索だった。
これは、それをよしとしないバリアンの王族暗殺の手をかい潜りながらの隠密行だったが、デイファレトは無事、約五十年来の新王を迎える事が出来たのだ。
それが約三年前の出来事。
デイファレトのそれは、想定していたものとはだいぶ異なる形での新王即位だったが…結果的にはそれが最善だったのかもしれない。
経験もほとんど無いあの若き王を迎えてから、雪国は良い方向に向かっている。
足りない知識は補えば良い。国政で分からない事があれば、雪国の王は直ぐにローアンに相談を持ち掛けてきたりとなかなか勉強熱心でもあるし、個人的にも親交は厚い。
神の御告げ通り、デイファレトは均衡を保っているが……最大の問題は、もう一つの隣国にある。