亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
三年前のデイファレトの新王即位と同時に、バリアンも新王を迎えたのだが……それが実の親を殺して得た、息子の謀反による即位だった。
父である老王の命を奪い、そして唯一無二の実の兄を亡き者にし、堂々と返り血塗れの玉座に腰を下ろしたバリアンの新王……まだ若いあの獅子は、神の御告げに従うどころか背を向けて鎖国を貫いている状態だ。
それも、以前の老王の様なただの引き籠もりではない。
これは根も葉もない単なる噂なのだが………あの砂漠の国からは、いずれは大火へと転じるかもしれない不気味な火花が散っている……つまり、戦の臭いを漂わせているのだ。
戦争など、神の意志に一番反する行いだ。
三国で手を結び、少しでも世の均衡を保ちたいところなのだが……あのバリアンだけは、反抗的だ。
幾度も参加を促してきた平和協定の誘いも、当たり前と言うのも何だが、バリアンは首を縦に振らない。
そしてそれは今回も同様。バリアンに送った使者に持たせた書状には、これで三度目になる協定への誘いを書いているが……はたして、バリアン王は何と返答してくるのか。
(………今回も黙りを決め込むのか、それとも…)
気になるのは参加、不参加の返答だが……ローアンの脳裏にはそれ以上に引っ掛かる点がある。
協定でも何でもいい。
一度でいい。面と向かって話し合う機会があれば…ローアンには、聞きたいことがある。
…彼の口から、きちんと、だ。
「…とりあえず、御苦労。……リストの帰宅はいつぐらいになりそうだ?」
バリアンに送った使者の代表は、特務師団長のリストだ。
この報告書をいち早く送ってきたのも彼。
ピリピリと敵意やら何やらでとにかく張り詰めたバリアンへの入国は、どんな危険があるか分からない。
それに対処出来る者としてリストを選んだのだ。
彼はまだ若い青年兵士だが、人間離れした戦闘能力を持ち、且つ危険な任務の経験も浅くはないため、安心して任せられる優秀な部下だ。
…このダリルも含め、彼もそうだが…部下と言うよりも、腐れ縁の戦友と言った方が適当かもしれない。