亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
この妙な親子のやり取りも、今では名物である。…ローアンもローアンだが。息子も息子だ。
ルウナ=ヴァルネーゼ。今年で五歳になるローアンの子供。
王位継承権を持つ王子で、この国ではローアンに次ぐ二番目に身分の高い子供だ。
性格は極めて明るく、天真爛漫、純粋無垢にして頭脳明晰という優れた五歳児。
しかし裏では何を考えているのか分からない腹黒い面もある。これは教育係がダリルだったからだ、という意見が周りからちらほら出ているが、当のダリルは「そんなまさか。ハハハ」と否定している。
ちなみに城の人間は皆知っていることだが、物凄いマザコンである。余談。
何ともご機嫌な様子でローアンの前で何故かクルクルと回り続けた後、ルウナは軽快なステップで階段を駆け下りていった。
ぼんやりと目を覚ましたダリルの脇を通り抜け、そのまま謁見の間の扉から廊下へと駆け抜ける…かと思いきや、突然クイックターンをしたかと思うと、誰もいない柱に向かってニコニコとしながら歩み寄っていく。
「ねぇ、ジン!ジン!いつものあれやって!ブーンして!ブーン!」
…差し込む陽光の薄い影のみを背に受けた太い柱に向かって、ルウナは何も無い空間に向かって両手を伸ばす。
―――その途端、ルウナの正面の空間が黒ずみ、火も無いのに黒煙が浮き上がると同時に…それは瞬きをする間も無く、人のシルエットへと変化したのだ。
勢い良く飛び跳ねたルウナを、そのシルエットがタイミングよく受け止めた時には、そこには今までいなかった筈の一人の男の姿が忽然とあった。
突如として黒煙から現れたのは、背の高い、灰色の短い髪の青年だった。
前髪から覗くのは獲物を狙う鷹の如き鋭い眼光と、そして右目の大きな眼帯だ。色白の端正な顔立ちだが、右目の下を中心に刻まれた大きな十時傷が何とも痛々しい。
その顔だけでも目を引くのだが、彼が纏う衣装にも思わず目が吸い寄せられてしまうだろう。
城内にいる人間は召使いや兵士に限らず、何かしら統一された制服を着ているのだが…彼だけは違い、そして異質なのだ。
ルウナ=ヴァルネーゼ。今年で五歳になるローアンの子供。
王位継承権を持つ王子で、この国ではローアンに次ぐ二番目に身分の高い子供だ。
性格は極めて明るく、天真爛漫、純粋無垢にして頭脳明晰という優れた五歳児。
しかし裏では何を考えているのか分からない腹黒い面もある。これは教育係がダリルだったからだ、という意見が周りからちらほら出ているが、当のダリルは「そんなまさか。ハハハ」と否定している。
ちなみに城の人間は皆知っていることだが、物凄いマザコンである。余談。
何ともご機嫌な様子でローアンの前で何故かクルクルと回り続けた後、ルウナは軽快なステップで階段を駆け下りていった。
ぼんやりと目を覚ましたダリルの脇を通り抜け、そのまま謁見の間の扉から廊下へと駆け抜ける…かと思いきや、突然クイックターンをしたかと思うと、誰もいない柱に向かってニコニコとしながら歩み寄っていく。
「ねぇ、ジン!ジン!いつものあれやって!ブーンして!ブーン!」
…差し込む陽光の薄い影のみを背に受けた太い柱に向かって、ルウナは何も無い空間に向かって両手を伸ばす。
―――その途端、ルウナの正面の空間が黒ずみ、火も無いのに黒煙が浮き上がると同時に…それは瞬きをする間も無く、人のシルエットへと変化したのだ。
勢い良く飛び跳ねたルウナを、そのシルエットがタイミングよく受け止めた時には、そこには今までいなかった筈の一人の男の姿が忽然とあった。
突如として黒煙から現れたのは、背の高い、灰色の短い髪の青年だった。
前髪から覗くのは獲物を狙う鷹の如き鋭い眼光と、そして右目の大きな眼帯だ。色白の端正な顔立ちだが、右目の下を中心に刻まれた大きな十時傷が何とも痛々しい。
その顔だけでも目を引くのだが、彼が纏う衣装にも思わず目が吸い寄せられてしまうだろう。
城内にいる人間は召使いや兵士に限らず、何かしら統一された制服を着ているのだが…彼だけは違い、そして異質なのだ。