亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
そう言ってドールは、ああ寒いとばかりに、雪の白さに映えるその淡い赤褐色の肌を撫でていた。
灼熱の砂漠の国で生まれた彼女は、この雪国で暮らし始めて三年経った今でも…この寒さには慣れ切れていないらしい。暑さには慣れていても、寒さにはとことん弱いのだ。


イブは門前まで迎えにきてくれたドールの隣りに並ぶと、二人揃って長い中庭の一本道を歩き始める。
隣りを歩くドールをじろじろと凝視していれば、当たり前だが彼女は若干うろたえた。こっちをあまり見ないでよ、と間近にあるイブの顔面を押し返す。

「前に会った時よりも背が伸びてるし……あのちびっ子も大人になったんだなーとしみじみ…………ドールって今何歳だっけ?」

「あんた、あたしの何なのよ。保護者か。……十五よ、十五。三年前と比べればそりゃあ大きくなるわよ…」

たった三年、されど三年。
その期間で人間はこんなにも成長するんだなーとイブは不思議そうにドールを観察する。

イブ自身は本の数日で幼児体型から成人の体型に変化してしまっている。自国の城でもルウナ王子の成長振りを日々見ているが、じわじわと大きくなっていく人間の成長過程がイブには面白くて仕方ない。

このドールに三年前に初めて会った時……まあ、当時は互いに敵味方と立場も違い、はちゃめちゃな出会い方だった訳だがそれはさておき。
簡単に脇に抱えられるほど小さかったあの少女が、今は背丈の差も数センチしか変わらぬ程に大きくなり、なかなかの姐御肌の別嬪さんになったものだ。

三年前のあの大きな騒動の後、故郷には帰らず何故かこの雪国に残ったドール。
衣食住の文化も異なるし、そもそも一際目立つその赤褐色の肌で、迫害を受けてしまうのではないかという心配もあったが……それも杞憂に終わったようだ。

現に、彼女は元気そうである。
しかし…未だにまだ納得いかない点が一つ、イブの脳裏にブラブラと引っ掛かっては揺れているものがある。




「…あのさー、ドール」

「何よ」

「…前も聞いたかもしれないけどさー」

「だから何よ」

「………なんでデイファレトに残ったの?」


抱えていた疑問を淡々と言い切った直後……一瞬だけ、本の一瞬だけピタリと彼女の足が止まったかに見えた……かと思いきや、ドールの歩調は急に加速した。
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